H.C.R.2014 ビジュアルデザイン
<作品“Mountain”について>
この作品が描き上がった時は不思議な感じで、自分で苦労したというよりも、絵の方から寄って来てくれたように、すんなり出来上がった。苦労した作品よりも、そうしてするっと出来た作品の方が、実はいつでも出来が良い。
山を描いているが、本当は何に見えても良くて、描いたのは絵画の楽しさである。ここではキャンパスを何かに変質させるためではなく、色が色として、絵の具が絵の具として、そのまま存在している。絵の具を混ぜた瞬間の驚き、描く時の筆のスピードによって、その線が変わってくること、生の色の生命感。それら絵を描く時に感覚する様々な事象を直感的な判断によってコントロールすることで絵が生成されていく過程を、なるべく生のまま閉じ込めた絵を描きたかった。その過程は、とてつもなくスリリングで、そして楽しい。
私はそんな絵画の楽しさにずっと導かれてきたから、この絵が来てくれたのかもしれない。だとすると、この絵は子供の頃からずっと親しくしていた友達のような存在だ。今回、この作品がポスターとして多くの場所に掲示いただけるという。絵画の楽しさが街に伝染するといいと思う。それは生きる楽しさにも通じると私は思う。